ジョーシスサイバー地経学研究所(JCGR)

不完全情報下におけるトップの決断、サイバー有事と国家管理にみるリスキリングの必要性(竹中治堅 政策研究大学院大学教授 【後編】)

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「何が起きているか完全に分からない状態で、トップは意思決定を迫られる」――。これが、大規模なサイバー攻撃やパンデミックなど、現代の危機管理に共通する最も過酷な特徴です。原因が特定できないまま被害の全容も見えず、さらにはSNSによって情報が錯綜し世論や社内が混乱する中で、経営者や政策担当者には迅速かつ的確な結論が求められます。 

前編(Apple | Spotify)に引き続きゲストにお迎えするのは、政策研究大学院大学教授の竹中治堅先生。日本の首相のリーダーシップや統治機構研究の第一人者であり、過去の金融危機や東日本大震災、コロナ禍といった国家レベルの危機対応の検証を数多く手がけてこられました。 

後編では、情報が不完全な有事において「機能するリーダーと機能不全に陥るリーダー」の決定的な違いについて掘り下げます。最前線の指揮官とトップを結ぶ直通回路の重要性や、近年激変するサイバー安全保障の法整備の背景にある政治的環境の変化、そして最大のボトルネックである「文理分断」の解消に向けた社会人の学び直し(リスキリング)の必要性について、組織論の観点から深く切り込みます。

■□ ハイライト □■

  • 最悪の事態を想定する決断力:金融危機やコロナ初期の対応から学ぶ、情報不足の中で批判を恐れず行動するトップの要件 
  • 現場と鑑定を結ぶ直通回路。:東日本大震災の事例にみる、間に入る解釈を排除した最前線とのコミュニケーションチャンネル 
  • 国会環境の変化と急速な法整備:セキュリティクリアランスや能動的サイバー防御が、短期間で法制化へ向かう政治的背景 
  • 文理分断の解消と経営層のアンテナ:「政治の時代」における国際情勢のインテリジェンスと、エンジニア用語を翻訳する統括機能 
  • 40代からの学び直しと大学の役割:統計学・データサイエンス・国際政治を社会人が再修得する、少子高齢化時代における教育ガバナンス 

<ゲストプロフィール>
竹中 治堅(たけなか・はるかた)さん
政策研究大学院大学教授。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。プリンストン大学で政治学博士号を取得。日本政治、比較政治の研究と教育に従事。関心は首相の指導力、コロナ危機への対応過程、参議院の役割など。著作に『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』『参議院とは何か – 1947〜2010』(2010年度大佛次郎論談賞受賞)『首相支配 —日本政治の変貌』など。政府の様々な政策に有識者として関わる。

■□ 収録後記 □■
竹中さんが自身の大学でも9月からサイバー関連の授業を履修予定であると明かし、「知らずを知る、これを記すなり。学びを常にアップデートしてないとついていけない」と語る姿勢には、経営層やリーダー層が持つべき本来のガバナンス意識のあり方を示されたように感じます。 

かつては大企業でも事業部ごとのサイロ化によるITリスクが懸念されていましたが、現代のサイバーリスクは株価の低迷やインフラの停止など、経営や政治の動向に直結するシステミックリスクへと拡大しています。専門用語のハードルを越え、理系側も経営や政治に関心を持ち、文系側も技術の基礎を学び直すという「共通言語」の構築こそが、これからの不確実な時代を生き抜く組織の防衛線になるという教訓となりました。 

(JCGR編集部)